伊香具神社(長浜市)概要: 伊香具神社は滋賀県長浜市木之本町大音に鎮座している神社です。伊香具神社の創建は不詳ですが上古の時代、この地を開発した伊香津臣命が、この地を守護するため祖神である伊香津臣命を勧請したのが始まりとされ、その子孫である伊香宿禰豊厚が白鳳10年(670)以前に社殿を建立したと伝えられています。古くから朝廷から崇敬の対象になっていた神社で慶雲2年(706)には社領1千石を賜わり、貞観元年(859)に従四位下、貞観8年(866)に従四位上に列しています(三代実録によると「貞観元年正月27日甲申奉授近江国従五位勲八等伊香神従四位以下」・「貞観8年閏3月7日壬子近江国従四位下勲八等伊香神授従四位下」)。延長5年(927)に編纂された延喜式神名帳には伊香郡唯一の名神大社として記載され当郡の総社として広く信仰されました。
弘仁3年(812)には真言宗の開祖弘法大師空海が浄信寺(木之本地蔵院)を中興した際、伊香具神社にも足を延ばし、参拝すると共に独鈷を境内に突き刺すと、そこから滾々と霊水が湧き出たと伝えられています(独鈷水)。境内にある蓮池も弘法大師空海が伊香胡の入江に巣くう大蛇を法力によって封じ込めたという伝説が残されています。又、社伝によると寛平7年(895)には菅原道真が書写した法華経金明経を奉納し、宇多天皇から「正一位勲一等大社大名神」の勅額を賜ったとされます(菅原道真は宇多天皇の勅命により寛平元年:889年に菅山寺を再興している事から伊香具神社とも関係があったかも知れません。
建武3年(1336)には足利尊氏が伊香具神社に対し祈祷を依頼し、神意に感謝し社領200石を寄進するなど為政者からも庇護され社運が隆盛しますが元亀年間(1570〜1573年)に織田信長により社領が没収され、さらに天正11年(1582)の賤岳の戦いの兵火により多くの社殿が焼失し衰退します。慶長13年(1608)に社殿の再建と神宮寺の造営が行われ正徳年間(1711〜1715年)に概ね境内が整備が完成しています。江戸時代には彦根藩の藩主井伊家も崇敬したとし神宝を寄進した時などは参拝に訪れていたそうです。明治時代初頭に発令された神仏分離令により仏式が廃され、明治8年(1875)に郷社、明治32年(1899)に県社、明治40年(1907)に神饌幣帛料供進神社に指定されています。
伊香具神社社殿は正徳年間(1711〜1715年)に造営されたもので本殿は一間社流造、檜皮葺き。拝殿は木造平屋建て、入母屋、茅葺、平入、桁行3間、張間2間、外壁は柱のみの吹き放し。中門(神門)は切妻、檜皮葺き、一間一戸。祭神:伊香津臣命。伊香津臣命は羽衣伝説に登場する「伊香刀美」と同一であるといい近江国風土記に記されています。
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